ここまでこだわるきっかけは、“ため池を流れる汚れた水”でした。
こんにちは。
福岡県八女郡広川町にある「ゆげ製茶」3代目当主の弓削 洋(ゆげ・ひろし)です。
このたびは「ゆげ製茶」のホームページをご訪問いただき誠にありがとうございます。
弓削家を代表して私がご案内をさせていただきます。
私たち家族は、
- 減農薬・減化学肥料での栽培
- 茶畑の土の改良
- 一番美味しいタイミングを狙った茶摘みの時間帯
- その年に摘み取った一番茶しか直販しない(=去年売れ残ったお茶とのブレンドを一切しない)
- さらに美味しいお茶にするために、今も最善の蒸し時間を追求
- 自前の工場を所有
など、他の家族経営の小さなお茶農家があまりやらないようなことを率先してやってきております。
なぜ、これほどまでにこだわるようになったのか?
そのきっかけは、1986年の「ある出来事」にあります。
私の父である2代目の弓削健二(ゆげ・けんじ)が、茶畑の脇にあるため池を見たときのこと。
そこに流れている水は、まるでヘドロのように汚れていました。
「やっぱり、こんなに農薬を使っていてはいけないんじゃないか?」
農薬を使う理由は、その昔、美味しいお茶のために品種化された茶の木がとてもデリケートで、虫や病気に弱いものが多かったからです。
そのため、八女地区のお茶は長らく、効率よく大量生産するために、許可された農薬を7~10回以上散布することが常識でした。
もちろん、散布することで人の身体に害があってはいけません。
そのため、認められた農薬を使用し、出荷前に残留農薬が基準値内であることを確認して、当局から「安全」というお墨付きをもらったお茶だけが出荷されていました。
それでも、あまりにも汚れているため池の水を、父は見過ごすことができませんでした。
「もしかして、京子の身体の不調もこれが原因では…」
当時、私の母である弓削京子はお茶農家である弓削家に嫁いで10年近く経っていたのですが、以前からなぜかずっと体調不良が続いていました。
父はその原因の一つは農薬にあるのではないかと考えたのです。
職人気質の父はいてもたってもいられず、すぐに「減農薬・減化学肥料」でお茶を作る取り組みを始めました。
家族経営の小さなお茶農家だから、信念を貫くことができました。
父の「減農薬・減化学肥料」の取り組みは試行錯誤の連続でした。
農薬を減らせば茶の木が虫に食われ、病気にもなる。
だから、必然的に茶の木の品種改良も必要になります。
さらには茶畑の土壌の改良も…。
「無駄だよ」
「採算取れないよ」
「無理しないで今までどおりに作ったら?」
まわりからはそう言われていました。
それでも、ため池の汚れた水が父の頭から離れません。
「減農薬・減化学肥料を成し遂げなければ日本のお茶に未来はない」
そこまで思い込み、年月を重ねても、お金がかかってもあきらめることなく試行錯誤を続けました。
それができたのは、弓削家が自園・自農であったことも大きな要因です。
ほんの少しでも共有している部分があると、共有者の理解が得られなければ続けることはできません。
自園・自農、そして家族経営の小さなお茶農家だから、家族全員が一致団結して信念を貫くことができました。
そして、数年後。
父の努力が実り、「減農薬・減化学肥料」によるお茶の栽培がようやく実現しました。
そして、その過程で得られた数々のデータ、そして栽培技術を独占することなく提供。
その結果、今では「減農薬・減化学肥料による安全・安心のお茶」が八女地区のお茶栽培の基本となりました。
この過程の中で、母・京子の体調もだんだんと良くなっていきました。
こだわりは、味に出る。だから、ここまでこだわってしまいました。
「減農薬・減化学肥料」でのお茶栽培は確かに大きなテーマでした。
しかし、それだけで「美味しくて身体に良いお茶」ができるわけではありません。
たとえば、お茶の木はとても繊細なため、茶畑の中でその木がある位置、また、土壌、天気、日当たりや風当たりの具合などによって出来具合はまったく違います。
そのあらゆる条件を把握して、どのお茶の木も最適な状態に管理するのは私たち職人の長年の経験がモノを言います。
それだけではありません。
- お茶が一番美味しい状態になるタイミングを狙って摘み取ること
- どれだけお茶の木を管理しても毎日微妙に異なる茶葉の状態に合わせて加工を施すこと
といった技術も要求されます。
この技術に関しては、試行錯誤の末、次のような領域に行き着きました。
まず、私たち「ゆげ製茶」のお茶は、朝の、ある時間帯にしか摘みません。
もちろん、毎日天気や温度・湿度などとにらめっこをして、摘むべき時だと判断したお茶に限ります。
作業効率を考えれば午後にも摘んだほうがよいのですが、それでは私たちが求める美味しいお茶が得られません。だからこそ、朝摘みにこだわています。
そして、その日に摘んだ茶葉の状態に最適な加工をするために、私の父は、かなりの設備投資をして納得のいく機械を揃え、自前の工場を作ってしまいました。
そして、100%純粋の「ゆげ製茶」のお茶を作ることにこだわっています。
一般にはあまり知られていませんが、買い付け専門のお茶業者さんという存在があり、私たち生産者が加工をせずにその業者さんに茶葉を卸してしまうと、いくつか買い付けたお茶を混ぜる「ブレンド」が行なわれます。
それでは、100%純粋の「ゆげ製茶」にはならない。
父のその想いが、まわりから「無謀」と言われても、自前の工場を作らせてしまったのでした。
さすがに母は心配したようですが、「こだわりは味に出る」という父の信念はとどまることを知りません。
こうして、本当に美味しくて身体に良いお茶にこだわりつづけた結果、「ゆげ製茶」は家族経営の小さなお茶農家としてはちょっと珍しい存在となりました。
直販では新茶の一番茶しかお届けしません。
一番茶とは、それぞれのお茶の木からその年最初に生育した新芽を摘み採ってつくったお茶のこと。
つまり、新茶の中でも一番最初のお茶ということです。
一番茶を摘んだ後に出てくる芽を摘んだ二番茶に比べ、栄養分も、味の主成分であるテアニンも多く、最も「本来のお茶」を味わっていただけるお茶です。
だからこそ、私たち「ゆげ製茶」は、直販においては一番茶しかお届けいたしません。
そして、多くのお茶は採算などを考慮して去年売れ残ったお茶とブレンドしていますが、「ゆげ製茶」では、ブレンドは一切行なっておりません。
もちろん、一番茶の摘み取りや加工にもこだわっております。
朝、私たちは新芽を摘むと、すぐに自社工場に運び、その日の天候や気温・湿度などを見ながら蒸していきます。
生の茶葉を蒸す理由は酸化酵素の働きを止めて品質の劣化を防ぐためです。
そして、蒸す時間の長さによって味や香りが決まるのですが、私たちはその日の天候や気温・湿度などを見ながら最適な蒸し時間で蒸しています。
作業効率が良くないことはわかっているのですが、このこだわりによって、茶葉が柔らかくなり、渋みや苦みの元であるタンニンも分解されて、コクのあるまろやかな味わいが引き出されるのです。
お茶の色も、茶葉が溶け込んだ濃い緑色になり、水に溶けない栄養素も豊富に含まれています。
だからこそ、私たちはお客様に本当に美味しいお茶をお届けするために、喜んで手間暇をかけ続けております。
ここまでこだわるなら、最後もしっかりこだわりたい。
「最後」とは、お茶を袋詰めしてお客様にお送りする段階のことです。
せっかくその手前の段階までこだわり抜いてきたのだから、最後まで自分たちの手で責任を持ってお届けしたい。
そんな想いから、私たちは「直販」にも力を入れております。
現在、私たちのお茶とそれに取り組む姿勢は、地元の農協さん、デパートさん、和菓子店さん、ホテルさんなど、数多くのお店が認めてくださり、今なお継続して取り扱っていただいております。
テレビやラジオなどのメディアも取材に来てくださいます。
それはとてもありがたく幸せなことなのですが、一方で私たちには「お客様と直接つながりたい」という想いがありました。
母・弓削京子は特にその想いが強く、以前から友人知人に求められ、ゆげ製茶のお茶を手売りしていました。
「今までいろんなお茶を飲んできたけど、ゆげさん家のお茶が一番美味しい!」
そのような声を直接聞けるのがうれしくて、もっとたくさんの方に私たちのお茶を届けたいと、気がつけば、工場の横に直売所を作っていました(笑)。
直売所では、お客様とお茶を飲みながらの会話もはずみます。
まさに、憩いのティータイム。
私たちのお茶は、こうした人と人とのふれあいの時間にも貢献しているのだと気付かされました。
そんなティータイムのひとときを、地元・福岡のみならず、全国の方々にも過ごしていただけたら。
その想い、そしてティータイムを彩る私たちのお茶を知っていただこうと、今ご覧いただいているこのサイトはできあがりました。
最近では全国のみならず、このサイトをご覧になった海外の方からも注文があり、大変ありがたい限りです。
袋詰めにもこだわってしまいました。
お客様にお届けするために行なう、お茶の袋詰め。
ここでも私たちは、最善の状態に仕上げたお茶を最適な保存状態で維持し続けるために、袋詰めのタイミングはもちろん、詰め袋にもこだわり抜いています。
同時に、母は女性の感性で「お客様にはパッケージも楽しんでいただきたい」と、袋のデザインや色合いもいろんなアイデアを出しています。
ここでもやはり、「採算」という発想はありません(笑)。
パッケージも含めた100%生粋の「ゆげ製茶」のお茶をお届けし、お客様に喜んでいただきたい。
その想いで、丹精込めて作り上げたお茶を、今日も心を込めて袋に詰めております。
お茶の専業農家だからこそ、つねにお茶のさらなる可能性を追求し続けています。
一般にはあまり知られていませんが、お茶農家のほとんどは兼業農家です。
それは悪いことではなく、お茶の時期が終われば時間に余裕ができるので他の作物を作るというのはむしろ当然のことと言えます。
しかしながら、私たち一家はお茶を愛しすぎているため(笑)、ずっとお茶の専業農家でやってきており、年中お茶のことばかり考え、行動しています。
初代の頃はお茶の他に筍、米、麦を作っている農家でしたが、2代目である父はお茶だけで生計を立てるのが夢で、杉山や竹林、田んぼを茶畑に開墾。
それでも茶畑が足りないと、融資を受けて周辺のみかん畑やじゃがいも畑などを購入しては茶畑に開梱していきました。
そうしてお茶の生産量を増やしつつ、一方で「減農薬・減化学肥料」に取り組んだのはすでにお話しましたとおりです。
さらには、茶畑で摘み取ったままのすがすがしい香りとみずみずしい緑色を保つために、酸化を止める最低限の加工だけをした「摘みたてなま茶」を完成させたり。
ただいま人気急上昇の国産紅茶「和紅茶」の製造に早くから取り組み、品質や味の決め手となる「発酵」の技術を習得。
そして日本で初めて紅茶の本場・インド政府公認のダージリン鑑定士により、取得困難とされた北ベンガルのダージリンと同格の鑑定書をいただいたり。
イギリスの高級食品小売組合(Guild of Fine Food)が主催する「食のオスカー」とも呼ばれる権威ある食品の国際コンテスト「グレートテイストアワード」で、一流シェフやバイヤー、高級食品の小売業者、レストラン経営者、食品評論家等による延べ75日間にわたる厳しい審査の結果、1つ星の評価をいただいたり。
茶葉の栄養をそのまま得ていただくために、地元のドライフルーツと合わせたグラノーラを開発したり。
これらの実績をもとに、地元・八女郡広川町の町長を表敬訪問して町ぐるみで和紅茶を生産する提案をさせていただいたり。
さらには、久留米大学さんとコラボして、学生さんたちにお茶作りを教えながらオリジナルのお茶「久留米大学茶」を開発したり。
このように、私たちはお茶の専業農家だからこそ、「お茶のポテンシャルはまだまだこんなものじゃない!」と、常日頃からお茶のさらなる可能性を追求し、創意工夫をしております。
そんな私たちのお茶をお楽しみいただけたら幸いです。
こうして、私たち「ゆげ製茶」は、お客様に喜んでいただけるお茶をお届けするために、今なお日々精進し続けております。
最近ではお客様から多くのご要望があったことをきっかけにお茶摘み体験イベントも行なうようになり、摘みたての新鮮な茶葉をお楽しみいただいております。
さらには、海外からもお客様が訪れてくださるようにもなりました。
お茶が心から大好きだから。
お茶作りの最初から最後まで、正真正銘の「ゆげ製茶」のお茶をお届けしたいから。
そしてなにより、本当に美味しくて安全・安心なお茶を味わっていただき、お客様に喜んでいただきたいから。
その想いとこだわりは、すべて私たちのお茶の味に反映されていると信じています。
そんな私たちに共感いただけましたら、ぜひ「ゆげ製茶」のお茶をお楽しみいただけたら幸いです。
私たちがお届けするお茶です。
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